農薬も肥料もつかわないでつくる「奇跡のリンゴ」で一躍有名になった木村秋則さん。
彼の農法にチャレンジする農家がじわじわと増えているらしい。
現代農業の8月号に自然農法の特集が載っていたので読んでみた。
木村さんに感化され、無農薬。無肥料でリンゴを作っている人の経過が載っている。
一年目 葉っぱがすべて虫に食われ、秋に花が咲いてしまう。
二年目 一年目の秋に花が咲いてしまったので、春に通常の一割しか花が咲かず、害虫が増えた。
三年目 秋まで葉が残るようになって、病気も減り、ジュース用ならリンゴが収穫できた。
四年目 収穫量が目に見えて増えてきたが、慣行栽培の7%程度。
徐々に良くなってはいるが、思っていた以上に厳しい。
ちなみに木村さんは、この農法にチャレンジして実がなったのは8年目のことらしいので、ある程度方法が確立されてきているので、畑の変化も速いのだろう。
木村さんのリンゴ畑は30年間無農薬・無肥料で管理して、今では病害虫でやられることはない上、味も良く、無農薬という付加価値も高いので、長い年月をかければ、この栽培方法は成り立つのだろうが、農業経営として考えた場合、投資資金の回収に長期間を有するので、余裕のある農家しかチャレンジできないと言える。実際今回取り上げられたリンゴ農家の方も定年帰農で始めたと書いてあった。
木村さんの自然栽培は、要は、山林の生態のように、人間が過度に手を加えず、長い年月をかけて、植物、虫、微生物といった畑の生態系のバランスを作り上げ、栽培植物自身に病害虫に対する自然免疫を獲得させる農法である。
これまでのような、化学肥料、化学農薬、大型機械をもって、省力化、高収量をあげる、いわば自然を支配する農法とは対極の農法であり、万物に神が宿り、自然と共存するという日本人の伝統的な自然観に近いものだろう。
ただし、究極はこの形が正しいのかも知れないが、これから新たに農業で食べていこうとする若い農家が実践して成功するかどうかは疑問である。
木村さんの著書を何冊か読んでみても、いくつかの方法には科学的な根拠が見出せるのだが、それだけではなく、「植物の声を聞き、それをとらえる感性を磨く」ことが大切らしいのだが、あまりに抽象的なのだ。
畑の状態ができあがるのに長い年月がかかり、その上、方法が確立されていないのでは、新たに始める方は勇気が必要だろう。木村さん本人も、うまくいってなかった時期に死を覚悟したと告白しており、信念を貫けるかどうかが鍵となる農法であろう。
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