発がん性リスクが高いグリホサート系除草剤とセットで世界的に栽培されている遺伝子組み換え作物のリスクと日本での流通について解説したいと思います。
遺伝子組み換えとは、トウモロコシや大豆などの遺伝子の一部の配列を人為的に他の生物(例えばバクテリア)の遺伝子と組み換えた作物のことです。
私は大学院時代、作物遺伝学を専攻しており、この分野の基礎研究をしていたこともあるので、素人でも分かりやすく、そのリスクと対策について解説していきたいと思います。
遺伝子組み換え作物の日本での流通について
アメリカでは、栽培されているトウモロコシ、大豆、綿花の9割以上が遺伝子組み換え作物になっており、国内流通加工食品の9割に遺伝子組み換え原材料が使われています。
現在、日本に輸入が許可されている遺伝子組み換え作物のうち流通されているものは、大豆、トウモロコシ、菜種、綿です。
菜種と綿はほとんどが食用油用です。
大豆やトウモロコシも食用油に使われていますが、原材料の割合として5%以下の加工原料(コーンスターチ、水飴、果糖ブドウ糖液糖など)には遺伝子組み換えの表示義務がなく、すでに多く使われていますので、私達は知らず知らずのうちに遺伝子組み換え作物を摂取してしまっています。
日本は大豆やトウモロコシの自給率が非常に低く(大豆約7%、トウモロコシ(スイートコーンは除く)は0%)、ほとんどを輸入に頼っているために、実は日本は世界でも有数の遺伝子組み換え作物消費国なのです。
それでも、豆腐や納豆、みそなどの原材料の重量比で上位3位以内かつ5%以上のものに関しては表示義務があるため、遺伝子組み換えではないものを選ぶことができます。
これは、JA(農協)の子会社である全農グレインが遺伝子組み換えではないものを分別生産管理して輸入してくれているおかげなのです。(農協は既得権益者だとして叩かれていますが、全農グレインの存在が邪魔なアメリカの穀物企業の影響があると言われています。
遺伝子組み換え表示に関係する食品表示法の改正について
令和2年の4月1日から施行される商品表示に関する法改正により、「遺伝子組み換えでない」という表示が「不検出」のものに限るという厳しいものに変わります。
その結果、製造工程上予期せぬ混入がある場合でも5%以内であれば遺伝子組み換えでないと表示できていた製品も表示ができなくなり、多量に入っている製品も、わずかしか入っていない製品も私達は区別ができなくなるのです。
これまで、できるだけ遺伝子組み換えでない原料を使用することによって消費者に選んでもらえるという動機があったのですが、表示ができなくなってしまえば、なし崩し的に遺伝子組み換え原料が使われてしまうことが懸念されます。
遺伝子組み換え作物のリスク
実のところ遺伝子組み換え作物は危険なのか?それとも安全なのか?
遺伝子組み換えが危険だと言われる根拠に2012年に発表されたフランス、カーン大学のセラリーニ教授らが行った動物試験がある。動物実験の結果、遺伝子組み換えのトウモロコシを餌として食べたマウスがガンになったことより、遺伝子組み換えの危険性が世間に広まった。
しかしながら、2019年2月、EUの「G-TwYST」(EUから資金援助を受けたプロジェクトで、遺伝子組み換え植物の2年間安全試験)が行った大規模な検証試験の結果が発表され、セラリーニ論文の妥当性が改めて否定された。(2019.10.25 JAcom webサイトより)
つまり、今の所、遺伝子組み換え作物自体が危険であるという科学的根拠に基づく証拠はないといえる。
そもそも、遺伝子組み換え自体は人為的とはいえ、自然界で稀に起こるメカニズムを応用したもので、私が大学院で研究していた頃も、安全性に問題があると指摘する研究者はあまりいなかった。それよりも、遺伝子組み換え技術により、人口増加による世界的な食糧不足を解決する一つの手段として期待されていたのです。
ただ、遺伝子組み換え作物は除草剤や殺虫剤とセットで使われるもので、除草剤に耐えることのできる遺伝子を組み込んでいるがために、発がん性があるグリホサート系除草剤を多量に使って栽培さてていることの方が危険だと言えます。
グリホサート系除草剤は、かなり低い濃度でも女性ホルモンの合成に関与する酵素の活性を低下させることや精巣細胞への悪影響が科学的根拠を元に指摘されています。
グリホサート系除草剤のリスクについては以下で詳しく解説しています。